寺院・お寺の百龍堂

試算で判明「家族葬は割安」はウソだった

試算で判明「家族葬は割安」はウソだった...

試算で判明「家族葬は割安」はウソだったの画像

「通夜・告別式は近親者のみで行います」。ここ10年で葬式の主流は、こうした家族葬になりつつある。
背景にあるのはコスト意識のようですが、実際には家族葬は従来の一般葬よりも割高だ。
「通夜・告別式は近親者のみで行います」という文言の背景
あなたは最近、勤務する会社の上司、もしくは同僚の親の葬式に出席したことがあるだろうか。
中堅以上の社員であれば、若手の時代に上司の親の訃報を受ければ、受付などの手伝いをしたことがあるのではないか。上司の葬式に何度か参列し、普段は厳格な上司が涙を見せたり、家族を紹介してくれたりして、「部長も人間らしいところがあるんだな」などと驚く。
しかし、ここ数年はどうだろう。特に東京で働く会社員は、会社がらみの葬式に出たことが、とんとなくなったのではないか。会社の掲示板の訃報通知には、昨今、決まってこんな文言がさらりと添えてある。
「通夜・告別式は近親者のみで行います。香典や供花は謹んでご辞退申し上げます」
こう書かれていれば喪主が、参列者を集めない「家族葬(密葬)」もしくは、葬式を実施しない「直葬」のいずれかを選択したことを意味する。

国会議員や大企業のトップさえも葬式をやらなくなった

1年前、東京都千代田区にある大企業(連結社員数約5500人)の3年間の訃報通知をカウントし、解析した。すると、約95%が「家族葬」か「直葬」だった。たしかに、現役時代に葬式に参加した最後は2006年頃だったように思います。
新聞の訃報欄にも変化がある。やはり、「通夜」および「葬儀・告別式」の日取りや場所が書かれておらず、かわりに「告別式は近親者で行う」との文言が添えられているのだ。
大手紙の訃報欄に掲載される故人は、国会議員や文化人、大企業のトップなどを経験した著名人である。「公人」ですら、会葬者を集めた葬式をやらないようになっているのだ。支援者が多数存在する政治家までもが、いまでは葬式をやらない。
2018年1月、「影の総理」と言われた元官房長官の野中広務さんが亡くなった。家族葬だった。3カ月後、「お別れの会」が開かた。
いまの家族葬にあたる密葬は、かつては世間に死の事実を知られたくない場合に行われる「タブーな葬式」であった。何らかの“事故”に巻き込まれて亡くなったりするケースなどで、これはかなりレアである。ましてや、直葬を選択する人は、ほとんどいなかった。世間体もあって、葬式はちゃんとしたのである。
弔いの社会基盤もしっかりしていた。地域で、死者が出れば回覧板などでその死を告知するとともに、町内会が葬式を取り仕切ったものだ。慌ただしい遺族に替わって、会社関係、知人らが積極的に手伝いを申し出た。
だが、ここ10年ほどで葬式はがらりと形態を変えた。
先の調査のように、東京都心部では家族葬が全体の5割以上、直葬は3割以上を占めている。
このような簡素な、「閉じられた葬式」はいま、中核都市に広がりを見せ、地方都市にも波及しつつある。

「コスト意識」が葬送が急激に簡素化している理由

なぜ、こんな急激に葬送が簡素化しているのだろうか。
要因は長寿化と核家族化、そしてマネーの問題である。長寿化は、それ自体は喜ばしいことだが、高齢者施設での生活が長引けば、地縁と血縁を分断させる。
参考までに、「死亡場所の推移」を紹介しよう。厚生労働省「人口動態調査」(平成29年)によれば、1955(昭和30)年には自宅死が77%、病院死が15%であった。それが1977(昭和52)年を境にして自宅死と病院死が逆転。現在では自宅死がわずか13%、病院や高齢者施設で死ぬ割合が85%となっている。
晩年、数年間でも高齢者施設に入れば、その人は地域社会の一員ではなくなってしまう。すると、遺族は地域の人を巻き込んで葬式を執り行うことを躊躇してしまう。
また、人々がコスト面を気にする傾向が葬式の簡素化につながっている。現在、葬送の担い手のコアは団塊世代(68~70歳)である。彼らは両親(90歳代)やきょうだい、さらに自分たち夫婦の葬式の準備に大わらわだ。
従来の一般葬の平均費用は150万円程度と言われる。今後、仮に5人の葬式の準備をしなければならないとすると、750万円以上もの費用が必要となる。老後資金が「公的年金以外に2000万円が必要」な時代だ。老後の蓄えに加え、さらに死後の費用を捻出するのは容易ではない。
葬儀社はそうした社会の葬送ニーズに合わせ、安価で簡素な葬式プランを打ち出す。遺族はパンフレットやネットなどで調べれば、価格表が出ていて、遺族が葬儀業者を選ぶ時代になっている。

前の寺院ニュースへ

次の寺院ニュースへ

関連 寺院ニュース

[お葬式]
前田敦子が映画「葬式の名人」で主演初.関西弁での演技に挑戦!...
[お葬式]
「うちの親の葬式はどうする?」お盆で話しておきたい両親が望む葬式スタイル...
[お坊さん]
お葬式、法事、法要で「お坊さん」を手配する時の料金は?...
[寺院葬]
終活読本「ソナエ」夏号発売/特集は「お寺のトリセツ」巻頭インタビューは、かたせ梨...
[遺産相続]
遺産相続の検討を始めるタイミングは40代・50代が多い/合同会社DMM.com...
[墓じまい]
50代で墓じまいを断行。親戚の反対を押し切り決断した理由/日刊SPA!...
[ペット葬儀]
ペットと一緒の墓に入れないのはなぜ?ペット終活/週刊朝日...
[寺院葬]
葬式にアップルウォッチは、アリかナシか...
[お坊さん]
お坊さんの手配はお付き合いのあるお坊さんや葬儀社経由での依頼が9割以上/合同会社...